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Ⓙオレンジシフォン

2020/11/29 18:26 お菓子 子ども 趣味 くらし 家族

私が子どもの頃、うちにオーブンは無かった。

小学生の私がお菓子を作り始めたのも

小さなトースターだった。


母は、お菓子など作る人では無かったから、

ほんとに時々作ってくれる、

サンドイッチで出たパン耳のかりんとうとか、

ミックス粉のホットケーキやドーナツ、

フレンチトーストとかが、堪らなく

嬉しかった。


でも何故か、

私が結婚し、家を出た途端にお菓子作りを

し始めた母。

私が置いて行った安物のハンドミキサーと、

最低限の型と道具を揃えて、

シフォンケーキばかりを作っていた。


友達と会うたび、誰かが家に来るたび、

習い事のお茶用に…としょっちゅう作っていた。




理由は分からないけど、作るのは決まっていて


"オレンジシフォン"


紅茶が好きだったから、

ピッタリのがオレンジだったのか…?

忘れてしまっていて、

聞いても答えは返って来ない。


作ってみよう。

最近、シフォンケーキが楽しくて、

色々作っていた。

その流れで思い出した母が作っていた

オレンジシフォンを同じレシピで作ってみたく

なった。

物持ちの良い母のこと。

案の定レシピ本はすぐに見つかった。

1996(平成8年) 初版 石橋かおり著


ネットが今ほどは普及してないこの時代、

シフォンを作っていた人は、絶対に見たことある

レシピ本じゃないかと…


母が、幾度も見たであろうページは、

かなり汚れて、字が読み取れないところは、

手書きで書き直してあった。


元気だった頃の母の姿が浮かぶ。

このケーキを持って、大好きな油絵の教室に

通っていた記憶が、蘇る。


ネットで手軽にレシピが見れたりする現代で、

こうして一冊のレシピ本と向き合うなんて、

今後ないのかも知れない…。



あのハンドミキサーだと、メレンゲ作りは

時間かかっただろうな〜

とか、

オレンジの皮を擦りおろしながら、

ホントに母がこんなことやってたのか?

とか、

絶対に母より上手く作ってやる!

とか、色んな思いがよぎる。



すると、娘が


「バァバに持っていくの?

なに〜親孝行ってやつ?」


と茶化してきた。


「いや、普通に懐かしくてさ〜

食べたら昔のこととか、何か思い出すか

実験だよ。興味本位だわ」


そんな軽口を叩いていたら焼き上がった。

オレンジシフォン。




認知症になって、約8年。

失われたのは記憶だけじゃ無い。


バァバが大好きだったうちの子供たちは、

すっかり距離を置いてしまっている。

成長したから、と言うのもあるけど、

段々と気持ちが離れて、心配する気持ちとか

いたわる気持ちとか、無くなってきてるかも。


仕方ないのよ。

関わると色々面倒なのは事実だし、

すっかり人格が変わり

子どもたちの目には、

"ひたすら自分勝手な老人"

にしか、見えないと思う。


我が子に愛情を注ぎ、

ずっと成長を見守ってくれた母。

私を一生懸命に育ててくれた母。

ここ数年の振る舞いで、簡単にそれが

無かったことになってしまっている気がして、

なんとも言えない気持ちになる時がある。


さてさて。

母は、オレンジシフォンの記憶あったのか!?


レシピ本をみて、


「あー、昔よく作ったな。懐かしい。」


しかーし、よく作ったオレンジシフォンのことは

記憶になかったのです。


でもね、


"シフォンケーキ作るの凄く楽しかったのよ"


と紅茶を飲みながら話す。

うん、私も一緒だよ。

久しぶりに、嬉しかった日曜日の午後でした。




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